R.I.P. Donny:マイナープロスペクトの死を悼む

Flickr.com


"The Show" このフレーズには、メジャーリーグに秘められたフィクション性が詰まっていると、私は感じている。辛いマイナーでの日々のゴールに存在する、夢の如き世界。ファンにとってもエンターテイメントの場であるメジャーリーグのボールパークとは、まさしく「楽しさ」だけが存在を許される、そんな環境にすら思えるハズだ。

しかし、メジャーリーグがいかにきらびやかな形容詞を得る舞台であるとしても、所詮はリアルの1部であると、私たちは知ってしまった。メジャーリーグを取り巻くあらゆる事例は、それを無遠慮に教えてくれたからだ。

バリー・ボンズ(元SF)等のスターが象徴するステロイド・エイジはまさしくコレに該当するだろう。13年のPEDスキャンダルも同じくであり、さらに16年ならば、DVたる形でファンは「メジャーリーグにも、汚れたリアルが存在する」ことを知ってきた。

しかし、そのいずれもは「プロスペクトが死去すること」よりも、ずっと救いがある。薬物にどっぷりなメジャーリーグも、DVに明け暮れるメジャーリーガーも、コレから良くなることはいくらでも出来る。マット・ブッシュ(TEX)が16年に辿ったサクセス・ストーリーの様に、生きてさえすれば軌道修正は可能だ。

だが、それは生きている者だけに与えられた特権でもある。本ポストでは、その意識に対して呼びかける意味合いで作成した、1980〜2016年で(25)以下で亡くなった主なプロスペクトのリストである。

人の死は悼むモノであり、そして風化させてはならない。本リストがきっかけとなり、MLBファン間で死への警鐘・意識が高まればコレ以上幸いなことは無い。リスト内に溢れ出る才能を蛮行で失ったプロスペクトが何人か存在することは、その上で大きな示唆となるハズだ。

なお、ツイートを貼り付けたことからもハッキリしている通り、本ポスト作成の大きなきっかけとなったのは、ツリを楽しんでいた際に湖に転落し、溺死したバンダービルト大のドニー・エベレット(RHP)のレポである。

R.I.P. Donny.
そして、このポストが特に、蛮行を繰り返す未来のスーパースター、ヤシエル・プイグ(LAD)に届くことを、心から祈っている。


********************
  • ダグ・ミリオン:COL:LHP:1975〜1997
    94年ドラフト #7 のトッププロスペクト。94年オフにはBAトップ100リストで #19 にランクイン。A+でプレーの95年からコントロールを失い評価を落とすも、細身でアップサイド大なLHPには注目が集まっていた。チームメートとクイズゲームを楽しんでいた際、喘息発作で死去。
  • マイク・ダー:SD:OF:1976〜2002
    02年シーズンに向けたST時に交通事故死。飲酒運転を行っていた上、シートベルトも未着用と軽率さが招いたアクシデントであった。元々はDETでプレーも96年オフのトレード後にSDでブレーク。01年にはバックアップOFとして105GにプレーしOPS.712をマーク。
  • ブライアン・コール:NYM:OF:1978〜2001
    パワー & スピードのダイナミックなコンビネーション。99〜00年はマイナーで15ホーマー & 50SBをクリア。00年オフにはBAトップ100リストで #64 にランクイン。01年に交通事故死。車の欠陥でシートベルトがロックされず、横転時に車から投げ出された衝撃が死因となった。
  • ダーネル・ステンソン:CIN:OF:1978〜2003
    AFLでプレー時にカージャックに巻き込まれ殺害。パワフルなバッティングがウリでマイナー8年で15ホーマー以上6回。メジャーでも03年に3ホーマー & OPS.753。04年のAFLからは不屈のプレーぶりを讃えるアワードとして「ダーネル・ステンソン・アワード」が設立。
  • スティーブ・ベックラー:BAL:RHP:1979〜2003
    マイナー5年は全てSPとしてプレー。安定したコントロールを土台に150IP以上4回とイニングイーターぶりを示した。02年にはメジャーでも3Gにリリーフ。ダイエット薬としてエフェドラを服用したことが原因となり心臓発作死。死亡時妻が身ごもっていた娘はその2ヶ月後に誕生。
  • グレッグ・ハルマン:SEA:OF:1987〜2011
    J.C.サルバラン(RHP)& アレックス・スミット(LHP)と共にオランダ出身の大器と評された。5ツール・タレントとして高い評価もプレーの粗さからブレークには至らず。11年に音楽ボリュームの大小をきっかけとした口論の末、弟ジェイソンにより刺殺された。
  • ニック・エイデンハート:LAA:RHP:1986〜2009
    HSでバッテリーを組んだデビッド・ウォーレンフェルツ曰く「9〜10歳の時から、地元ワシントン・カウンティでは誰もが知っていた」。ドラフト直後にTJもストレート & カーブのコンビネーションをLAAは高く評価。メジャー初QSをマークした日の夜に交通事故死。
  • ダスティン・ケロッグ:HOU:RHP:1993〜2011
    11年ドラフト #1030 でHOU入り。キャニー・クリークHS史上初めてドラフトを受けた人材となった。マイナーでは6.1IPでプレーするに止まるも9K/1BBとハイレベルなパフォーマンス。11年10月に自身が運転する車が貨物輸送用の大型トラックに衝突し即死。
  • エバン・チェンバース:PIT:OF:1989〜2013
    CC出身も09年ドラフトでは #84 と高い評価。20SBレベルのスピード & ハイレベルなアプローチが光り、10年にはAで92BB。ディフェンスでもCFをプレーし、リードオフタイプとして定評。ヒッティングセンスに乏しく、マイナー5年で打率.227止まり。13年末に不整脈で死去。
  • オスカー・タベラス:STL:OF:1992〜2014
    マイナー6年で.320のハイアベレージ。大きなスイングながらもあらゆるボールを捉え抜くバッティングはマイナー時からハイライトビデオが作成されたレベル。14年NLCSに敗れた10日後、ドミニカ共和国で事故死。検死曰く、本人の飲酒運転が原因とされている。
  • ビクター・サンチェス:SEA:RHP:1995〜2015
    14年には(19)にして2Aでプレー。6-0と小柄も255ポンドとどっしりとしたフレームでバートロ・コロン(NYM)と比べられた人材。コマンド&チェンジアップもソリッド。14年オフにベネズエラでボートに衝突、1ヶ月の昏睡状態の末命を落とした。
  • マイク・ノーラン:OAK:LHP:1992〜2015
    マイナーでのプレー無く命を落とした。ドラフトイヤーにSPとして76IP/84K/18BBとソリッドなパフォーマンスを示し評価を上げた。6-7/215と大柄なフレーム面も高評価。地元ヨンカーのバーガーキングに入店する際、4人組の不良グループから凶弾。1ヶ月後に脳死が告げられた。
********************


P.S.

このビデオは09年にLAAがAL西地区を制した時のモノだ。

この光景からは、一体何を感じられるだろうか?LAAたるチームのハートフルさ?それとも、エイデンハートを失ったことに由来する虚無感?はたまた、エイデンハートを亡き者に変えたアンドリュー・ギャロへの憎悪だろうか?

そのどれもが、きっと真実であるハズだ。だが、少なくとも私にとってはどうでも良いことでもある。いずれにしても、このような光景はもう目にしたくないことだけがハッキリしている。

悲しい涙に濡れたメジャーリーグなど、フィクションとしては最低である。
例え、それが本当はフィクションでは無いと知っているとしても。

0 コメント :

コメントを投稿